第504回 カロリー欠損でも筋量アップする??


ダイエッターの理想として、食べたものは全て筋肉に取込まれ、運動で使われるエネルギーは全て体脂肪であれば申し分ありません。しかし、人間の体はそのように都合よくは作られておらず、減量すると体脂肪だけでなく筋肉も減少します。
遺伝的に高P-Ratio、つまり “余剰カロリーは筋肉>脂肪へ、減量で減るのは脂肪>筋肉” といった比率の恵まれた人も稀にいますが、残念ながら非凡たる我々はそうではありません。

画像


有酸素運動で脂肪を減らしながら、同時に筋トレで筋量アップは出来る!
然るべき論文もある!
このように主張する方が依然としていらっしゃる。

確かに論文は存在します。
それは、1997年9月付けでMedicine & Science In Sports & Exerciseに掲載された “Effects of cross-training on markers of insulin resistance/hyperinsulinemia” で『高インスリン血症でセデンタリーの肥満者16名に、有酸素運動と筋トレを同時に14週間やらせた結果、 脂肪が16.3ポンド(約7kg)減少し、LBMが9.5ポンド(約4kg)増えた)という報告がなされています。
因みに、この実験では有酸素運動は自転車とウオーキング各30分(運動強度HRR 60-70%)、筋トレはベンチプレス、ラットプルダウン、ミリタリープレス、バーベルカール、トライセプス、レッグプレス、レッグカール、カーフレイズの8種目をそれぞれ8-12レップスx4セット行っています。

下表は、実験内容の数値を見やすく且つ日本語で一覧表にしたものです:

画像


この研究そのものに欠陥があるとは言いませんが、このような特殊な事例を一般の人たちにそのまま当てはめるのは不適切です。

何故このような結果が生じたのか?
その理由は、

・本研究の被験者は、セデンタリーで高インスリン血症の肥満者です。

・太っている人ほどエネルギー源として脂肪が多く使われ、食事制限や運動で脂肪が落ちやすい。痩せてしまうと脂肪酸の動員が難しくなり、脂肪の使用が低下します。

・太ればインスリン抵抗性が高まり、痩せればインスリン感受性が高まります。

・食事制限で減量するケースでは、インスリン抵抗性の方が良いことが分かっています。
何故なら、“ダイエットに効果的な、成長ホルモン、クレンブテロールやエフェドリンなどの薬剤はインスリン抵抗性を引き起こすこと”、“筋肉でのエネルギー燃料としてのグルコースを制限することで、脳へのグルコース供給を補い、筋肉でのエネルギー燃料として脂肪酸の使用が高まること”が分かっているからです・・・(註)インスリン抵抗性を奨めているのではないので誤解しないでください。

・筋トレ経験のない初心者では一時的に筋量アップしやすい。

・セデンタリーでもマッスルメモリーがあれば筋量アップしやすい。

・LBMなど各人の数値が明らかにされていない(平均値のみ記載): “平均値の代表的な3つの誤解” に詳しく書かれています。

取り纏めますと、
カロリー欠損での筋量アップは、「非常に太った人」、「全く筋トレ経験のない人」、「筋トレを中断して筋力や筋肉量が少なくなっても、トレーニングを再開すると以前の筋力・筋肉量まで比較的早く戻せるマッスルメモリー」、或いは「ドラッグの使用」といったケースでは限定的/一過性的に起こり得ても、決して一般的には起こるものではありません。

関連記事
第327回のカロリーのイン & アウト
第270回の“体脂肪率の初期値” vs “体組成の変化”
第259回のリセットダイエットの甘い誘惑
第258回のAMPkは代謝制御の主要因子です!
第256回の食事の回数 vs 筋量

この記事へのトラックバック